キミとひみつの恋をして
どうやら焼きそば屋さんのようで、メニューも豊富に用意されている。
キムチ焼きそばとか、夜ご飯に出したら兄が喜びそうだなと眺めていたら、䋝田先輩が焼きそばの詰まったフードパックを手にして私たちに差し出した。
「はいよ、俺の愛情たっぷりの焼きそば」
ありがとうとございますとお礼を述べながら受け取ると、二ノ宮が冷静に突っ込む。
「普通の塩焼きそばに見えますけど」
「愛は目に見えないもんなんだよ。千尋用はフォークにするか?」
「いや、箸でいけますよ」
「さすが。まあ、焦んなよ。しっかり食って治せ」
励まし、唇に弧を描いた䋝田先輩に、二ノ宮は微笑み返した。
そして「千尋」と少し真面目な声色で呼んで。
「はい?」
「美羽ちゃん、お前にはもったいないくらいいい女だよな」
いきなり私を持ち上げ始めた。
突然何を言い出すのかと瞬きをしていると、二ノ宮は肯定も否定もせず、ただ一言。
「……あげませんよ」
つららのような冷たい目で微笑みながら、牽制した。