キミとひみつの恋をして


嬉しいな、と。

素直に思う。

だけど、切なくもなるし、胸が苦しくもなった。

時間は着実に進んでいる。

その時へ近づいていく。


「とらねーでおいてやるから、やるべきこと、しっかりやれよ」


私からすれば予告めいた言い振りにドキッとしたけれど、二ノ宮は「わかってますよ」と軽くあしらうように言って、私の手を引いた。

慌てて先輩に会釈し、二ノ宮の隣に並ぶ。

背後から「お。そこのオネーサン。俺の愛情たっぷりの焼きそば食べませんか?」なんて、䋝田先輩の調子のいい呼び込みが聞こえて、その彼らしさに私たちは目を見合わせて苦笑した。


䋝田先輩の愛情入り塩焼きそばはなかなか美味しかった。

食べ終わった私たちは、その後も手を繋ぎながら文化祭を堪能して……本当に久しぶりに、心から笑顔を交わせたと思う。

やがて、一般公開の時間も終わりが迫ってきて。

私たちは自然とスタート地点の金木犀の下で立ち止まった。


「後夜祭も、ここで待ち合わせにしようか」

「うん。それじゃあ、片付け頑張ろうね」


また後でね。

そう言って、踵を返した刹那。


「好きだよ、桃原」


予想もしていないタイミングで二ノ宮から告げられた言葉に、私は驚いて振り返った。

彼から発せられた愛の言葉が、私の頬を赤く染める。


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