キミとひみつの恋をして
「い、いきなりどうしたの」
「伝えられる時に伝えておこうと思ったんだ」
優しく、けれど、どこか切羽詰まったような微笑みを浮かべた彼に、もしかして、と予感する。
私のしようとしていることに、気づいているのでは、と。
本当なら、応えない方がいいのかもしれない。
だけど、目の前の彼の瞳の奥に見え隠れする不安をそのままにしておけなくて。
何より、私の彼に対する恋心が、離れがたいという思いが私を動かした。
まだじわりと熱を持つ頬を両手で冷やすように押さえて、そっと気持ちを伝える。
「私も、好き」
近くに人はいなけいけど、照れが勝って声が小さくなってしまって。
でも、二ノ宮には届いていたようで、また、なんともいえない笑みを見せた。
「うん……ありがとう」
気づいているとしたら。
なぜ、聞かないのか。
確信が持てないから?
確かめるのが怖いから?
それとも──受け入れるつもりだから?
「じゃあ、また後夜祭でね」
考えてしまえばひたすら苦しくなるしかないそれらを振り切るように、私は笑みを浮かべて再び踵を返した。
伝えられる時に、伝えることの大切さが、今、私の胸を切なく締め付ける。
今日一日で、あと何回、彼に好きだと言えるかな。
もしかしたら……
今のが、最後だったかもしれない。
考え至った刹那のこの胸の痛みを、必死に留める涙でぼやけた中庭の風景を、私は決して忘れることはないだろうと、心から思った。