キミとひみつの恋をして
午後6時になると、校内に後夜祭開始のアナウンスが流れる。
すでにクラスの片付けは済んでいて、結城は私の肩を叩くと気遣うような笑みを残し、クラスメイトたちと教室を出た。
多くの生徒は花火を見物する為に校庭に集まっている。
私はその流れに逆らって、中庭ん目指し歩いていた。
思い返せば、修学旅行の時もこんな風にみんなと違う場所を目指して、二ノ宮に会いに行ったっけ。
キスした理由を知りたくて。
失恋覚悟で宿泊先の裏口に向かったんだ。
まだ半年も経ってないけど、なんだかもう懐かしい気持ちになる。
あの時の私が、こんな日が訪れると知ったらどうするだろうか。
辛い思いをするなら、別れるくらいならばと、二ノ宮に会いに行くことをやめただろうか。
それとも、全て覚悟して、苦しくても二ノ宮の隣にいることを望むだろうか。
……きっと、後者を選ぶだろう。
だって。
「桃原」
別れを前にして。
「なんかさ、今思い出してたんだ」
黄色い花が咲き誇る木の下に立つ彼を見ただけで。
「修学旅行の時に、待ち合わせしたなぁって」
泣きたくなるほどに、彼を想っているのだから。