キミとひみつの恋をして


「うん……私も、同じこと思い出してたよ」


甘い匂いが鼻を掠めて、私は彼の隣に並んだ。

二ノ宮は「気が合うね」と微笑むと、校庭の方角を指差した。


「ここからも花火見えるらしいから、そこのベンチに座って見る?」

「そうなの?」

「䋝田先輩から、花火は校舎にギリギリ被らなかったって去年の文化祭後に聞いたよ」

「じゃあ、めちゃ穴場なんだね」


辺りに人気はなく。

そこにあるのは、見慣れた中庭と、淡い香りを放つ金木犀と、私たちの2人だけ。

背もたれもない木製のベンチに2人並んで腰掛けて、花火が上がるのを待つ。

後夜祭の打ち上げ花火は5分ほどで終わるものだ。

眺めて話していたら本当にあっという間に終わるだろう。

何を話そうか。

いつ、切り出そうか。

花火のあとは自由参加のカラオケ大会があり、雰囲気は賑やかになる。

それが終わってからだと少し話しにくくなるかもしれない。

でも、二ノ宮ともっと一緒にいたくて、後夜祭か終わるギリギリまでは……

そんな風に考えていたら、ドン、と空気が震える音がして、夜空に1発目の花火が広がった。

色鮮やかな花が散ると、また次の花火が上がる。

打ち上がる花火は、確かに校舎に被ることなる見えていて、ここは間違いなく穴場であり、さしずめこのベンチは花火観覧の特等席だ。


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