キミとひみつの恋をして
花火が打ち上がる。
秋夜の空気が震えて。
金木犀の甘い香りが辺りを包んでいて。
二ノ宮の、息を吐く音が聞こえた。
いつまでも俯いていてはいけないと、ゆっくりと顔を上げれば、二ノ宮は私を見つめていた視線を悲しそうに落とす。
「俺の為に、決めてくれたんだろ? でも、ありがとうなんて……思えない」
花火の音にかき消されそうな声で吐露したそれは、私を責めるもの。
「むかつくよ、勝手に決めて」
力なく口にして、ふと、その唇がわなないたかと思うと。
「でも、そうさせた自分にも腹が立つ」
今度は自分を責めた。
やがて、諦めの息を静かに吐き出して。
「ごめん……違うよな。やっぱり、ありがとうだ」
ごめん、と。
再び紡がれて、私は唇を噛み締め首を横に振った。
私の方こそ謝らなければならない。
でも、今口を開いたら泣いてしまいそうで怖くて。
そんな私を見て、二ノ宮が泣きそうな顔で微笑むから、余計に切なくなる。