キミとひみつの恋をして


花火が打ち上がる。

秋夜の空気が震えて。

金木犀の甘い香りが辺りを包んでいて。

二ノ宮の、息を吐く音が聞こえた。


いつまでも俯いていてはいけないと、ゆっくりと顔を上げれば、二ノ宮は私を見つめていた視線を悲しそうに落とす。


「俺の為に、決めてくれたんだろ? でも、ありがとうなんて……思えない」


花火の音にかき消されそうな声で吐露したそれは、私を責めるもの。


「むかつくよ、勝手に決めて」


力なく口にして、ふと、その唇がわなないたかと思うと。


「でも、そうさせた自分にも腹が立つ」


今度は自分を責めた。

やがて、諦めの息を静かに吐き出して。


「ごめん……違うよな。やっぱり、ありがとうだ」


ごめん、と。

再び紡がれて、私は唇を噛み締め首を横に振った。

私の方こそ謝らなければならない。

でも、今口を開いたら泣いてしまいそうで怖くて。

そんな私を見て、二ノ宮が泣きそうな顔で微笑むから、余計に切なくなる。


< 232 / 240 >

この作品をシェア

pagetop