キミとひみつの恋をして


そして──


「……まさかの展開」


夕食時、私は独りごちて肩を落とす。

なんと、夕食は各部屋で食べるらしいのだ。

意気消沈しつつ、和室の隅に置いてある自分の鞄から旅の予定表を引っ張り出して確認してみれば、確かに書いてある。

【18:00 夕食 各部屋にて】と。

もっと熟読しておくべきだった。

そうすれば、こんなに落ち込まないで済んだのに。

会えない状況が続けば続くほど、無性に会いたくなる。

思えば、私は恵まれているのだ。

同じ部にいるから、夏休みも冬休みも定期的に好きな人に会えるのだから。

そう。

会えるとわかっているから待てる。

でも、こうして会えると思っていて、かつ会いたいと願っていたのに会えないというのは、なかなかに辛い。

何か、理由をつけて会えないかな、なんて考えてしまうほどに。

けれど、いい理由も思いつかないまま、夕食が用意されて。

焦がれる気持ちを押し殺すように、同じ部屋の友人たちと食事を楽しんだ。

それから、入浴の時間がやってきて、大浴場で1日の汚れと疲れを流した私は、脱衣所で髪を乾かし終わると友人と話しながら廊下に出た。

その、直後。


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