キミとひみつの恋をして


「そして、振り向いた先には血まみれの女が!」


灯りを全て消した部屋で、わざと驚かすように男子が少し大きな声を出す。

この部屋を照らすのは、窓から差し込む月明かりのみ。

部屋いっぱいに敷かれた布団の上で、私たちは輪になり、20分ほど前から怪談噺しを楽しんでいた。

どうやらこの部屋の男子たちは、事前にいくつか怖い話を仕入れていたらしく、スマホをチラチラと見ながら話す人もいる。

私は、二ノ宮に言われた通り彼の隣に座って話を聞いていた。

ちなみに、この部屋に女子は私と柑菜の2人だけだ。

実は、本来いるはずの見張りの先生がたまたま不在だったようで、運良く来ることができた。

この部屋の男子曰く、他にも女子に声をかけたらしいけれど、来ないところを見ると先生が仁王立ちしているのだろう。

私は本当にラッキーだった。


「次、誰が話す?」

「藤崎、お前茶道部だろ? 和室での恐怖体験とかねーの?」

「えー? あ、お茶を顧問にぶっかけた恐怖体験ならあるけど」


柑菜のボケに男子たちが大ウケしていると、二ノ宮が私の袖をツンと引く。

可愛らしい行為に少しドキッとしながらも、私は首を傾げた。


< 30 / 240 >

この作品をシェア

pagetop