キミとひみつの恋をして
「なに?」
「明日の夜レクさ、桃原は出番ある?」
盛り上がる皆に聞こえないように話す二ノ宮に合わせ、私も抑え気味の声で答える。
「私は何もしないよ」
2日目の夜に催されるレクリエーションは、クラスごとで何かを発表することになっている。
うちのクラスは手品を披露するんだけど、私は衣装製作係なので、当日の出番はない。
だから頭を振れば、二ノ宮は微笑んだ。
「じゃあ、少し抜けれる?」
「うん」
「オッケー。じゃあ、始まる時にトイレ行く振りして裏口で待ち合わせしよう」
……な、に、これ。
なにこれ。
まるで、こっそり抜け出す恋人みたいじゃない?
ま、待って待って待って私。
変に期待しちゃダメだ。
別に2人で、なんて一言も彼は言ってない。
ましてや二ノ宮には好きな人がいるし、このお誘いだってもしかしたら相談か何かかもしれないんだから。
恋愛相談だってありえるのだ。
その場合、苦しみを伴うのだから、期待なんてしてたら絶望するレベルで落ち込んでしまうだろう。