キミとひみつの恋をして
「これ、折り畳み傘だから小さくて。相合傘だときついから、桃原使っていいよ」
「えっ? い、いいよ。私は雨が弱まったら帰るから」
二ノ宮の厚意は嬉しいけれど、迷惑はかけられないと私は両手を小さく振って遠慮した。
けれど。
「じゃ、俺もここにいる」
彼は帰ることなく、傘を畳んで私の横に並んだ。
「私は大丈夫だよ?」
「俺が大丈夫じゃないんだよ。こんなとこで、桃原を1人にしたくない」
ナンパされたりしたら困るだろ。
冗談めかして笑う二ノ宮の優しさに、好きの気持ちが溢れ出す。
だけど、彼のように好きという言葉を口に出せない私は。
「ありがと」
その言葉に気持ちを込めるのが精一杯。
それでも二ノ宮は嬉しそうに目を細めて「どういたしまして」と返すと、少し冷えた手で私の手に触れて。
遠慮がちに、指を絡めて……繋いだ。
誰かに見られたら大変なのはわかってるけど、振りほどくことはしたくなくて。
地面を叩きつける雨音を聞きながら、私はそっとその手に力を込めた。