キミとひみつの恋をして


「これ、折り畳み傘だから小さくて。相合傘だときついから、桃原使っていいよ」

「えっ? い、いいよ。私は雨が弱まったら帰るから」


二ノ宮の厚意は嬉しいけれど、迷惑はかけられないと私は両手を小さく振って遠慮した。
けれど。


「じゃ、俺もここにいる」


彼は帰ることなく、傘を畳んで私の横に並んだ。


「私は大丈夫だよ?」

「俺が大丈夫じゃないんだよ。こんなとこで、桃原を1人にしたくない」


ナンパされたりしたら困るだろ。

冗談めかして笑う二ノ宮の優しさに、好きの気持ちが溢れ出す。

だけど、彼のように好きという言葉を口に出せない私は。


「ありがと」


その言葉に気持ちを込めるのが精一杯。

それでも二ノ宮は嬉しそうに目を細めて「どういたしまして」と返すと、少し冷えた手で私の手に触れて。

遠慮がちに、指を絡めて……繋いだ。

誰かに見られたら大変なのはわかってるけど、振りほどくことはしたくなくて。

地面を叩きつける雨音を聞きながら、私はそっとその手に力を込めた。


< 49 / 240 >

この作品をシェア

pagetop