キミとひみつの恋をして
黄昏時。
もうすぐ消えゆく夕日の赤色を背に、私はミントグリーン色の玄関扉を開けた。
「ただいまー」
玄関のタイルには私の兄が愛用しているスニーカーが脱ぎ散らかっている。
どうやら兄は家にいるようで、二階から物音が聞こえていた。
私は履いているローファーを脱ぎ、そのまま自室のある二階へと向かう。
手すりに手を添えて階段を登り、折り返したところで兄の話し声が聞こえてきた。
どうやら誰かと電話してるらしい。
彼女かな。
予想して、兄の部屋の前で立ち止まる。
すると、ちょうど電話を終えたらしく、わずかに開いていたドアが動いて兄が現れた。
「おかー」
兄、桃原 陽輝(はるき)は、現在大学生だ。
正直、妹の目から見てもイケメンだと思う。
モテるのも理解できるし、何気に家族思いだし自慢の兄だ。
「ただいま。お兄ちゃん、これからデート?」
「ちげーよ。蓮と飯食ってくる」
なんだ、蓮さんか。
蓮さんは兄の仲良しさんで、時々うちにも遊びに来る。
兄とは違うタイプのイケメンで、確か高校から付き合ってる彼女がいるんだっけ。
お兄ちゃんも早く落ち着けばいいのに、というのは声に出すと「うるせー」と言われるだけなので黙っておく。