キミとひみつの恋をして


「じゃ、戸締りちゃんとしとけよ」

「いってらっしゃーい」


出かける兄を見送って、私は自室でルームウェアに着替えると、夕飯を温める為にキッチンへと向かった。

冷蔵庫を開け冷んやりとした空気を受けながら思い返すのは、昨日の二ノ宮とのやり取り。

今日が私の誕生日だということは、去年たまたま二ノ宮と話したことがあって。

それを覚えていてくれた彼は提案してくれた。

今日、部活が終わってからお祝いしにどこかに行こうかって。

でも、今は大会で部員は自主練で忙しい。

特にレギュラーである二ノ宮には、バスケに集中してほしかった。

だから、次の休みの時でもいいと断わったのだ。

誕生日は来年も再来年もある。

無理はする必要なんてない……と、思うものの、こうして1人で家にいると、やっぱり会いたかったなという想いが募って。

まだ練習してるかなと、レンチンした熱々のチャーハンをテーブルに置きながら壁にかかるアンティーク調の時計に視線をやった時。

──ピンポン、と。

玄関のチャイムが軽やかな音を鳴らして来客を知らせた。

宅急便か新聞屋か。

私はそんな予想をしながら、四角いモニターに映る姿を確認し……驚いた。


< 56 / 240 >

この作品をシェア

pagetop