キミとひみつの恋をして
そろそろ部長も来る頃だし、ドリンクの用意を始めなければならない私は、䋝田先輩をあしらおうと歩みを止めた直後──
「䋝田先輩、桃原にからむのやめてくださいよ」
ワンポイントの入った白いTシャツに紺色のジャージを纏った二ノ宮が、さり気なく私と䋝田先輩の間に割って入った。
「なんだよ千尋。お前彼女できたんだろ?」
䋝田先輩が、私の心にひっかかりながらも声にできずにいた言葉をさらりと口にして。
私の心臓が強く跳ねた。
心の準備もできないまま、私はいきなり失恋しなければならないのかと、逃げるように二ノ宮から視線を外すと……
「できてないし」
否定の、言葉が聞こえて。
無意識に固くなっていた体から一気に力が抜けた。
「だって噂になってんじゃん?」
「みたいだけど、できてませんから」
再度頭を降った二ノ宮に、さらに食い下がる䋝田先輩。
「告白されたんだろ?」
「断ったんで」
そ、うだったんだ……
二ノ宮、告白断ってたんだ。
返事を保留していれる可能性も消えて、私はそっと胸を撫で下ろしたところで、䋝田先輩が「マジか」と驚いた声を上げる。