キミとひみつの恋をして
「洗濯おつかれ」
「二ノ宮こそ、お疲れ様」
「うん。あのさ……少し、充電させて」
彼は言うが早いか、私をその腕の中にすっぽりと収めた。
いきなり抱き締められて、見つかったらどうしようと目を白黒させてしまったけど、三輪君とのことを思い出した私は、特に抵抗もせずに、彼の背中に腕を回した。
彼の使う制汗剤の香りが、干されている洗濯物の香りと合わさって鼻をくすぐる。
「ごめん、汗臭いだろ」
「気にならないよ。それより、こんなことして誰かに見られたら……」
「みんな風呂に行ってるから大丈夫。ね、桃原……キスしていい?」
甘えた声で囁かれたそれは、さすがにこんなところでは首を縦に振れない内容で。
「ダ、ダメだよ」
ドキドキしながら慌てて拒否すると、想定内だったのか二ノ宮は小さく笑って「だよなー」と抱き締めたまま体を僅かに離し私の顔を見た。
「そういえば、䋝田先輩との買い出し大丈夫だった?」
「うん。あ、でも怪しまれてたからとっさにウソついちゃった」
事のいきさつを説明すると、二ノ宮は今後話を合わせてくれることになり、とりあえずこの件に関してはこれから変に勘ぐられても安心だろう。
ただ、嘘に嘘を重ねてしまうのは少し心苦しい。
それは二ノ宮も感じていたのか、彼は小さく息を吐き出した。