キミとひみつの恋をして
「もったいねー! まあでも? 俺が美羽ちゃん誘っても千尋には関係ないだろ? てことで、美羽ちゃん。今夜は俺と」
多分ロクでもない話しを続けようとしたんだろうけど、䋝田先輩の言葉は館内に響いたパンパンという手を打つ音に制止された。
「はいはい、そこまでだよ圭介。部内恋愛禁止なんだから、桃原さんには手を出さない」
柔らかくたしなめる声が聞こえて、私たちは一斉に振り返る。
「おー、昴(すばる)。ハヨー」
䋝田先輩は指摘に怯むことなく笑みを浮かべた。
相手の名は一条(いちじょう) 昴。
男バスの部長さん。
䋝田先輩と同じクラスで、普段は穏やか人だけど怒ると怖いタイプなのだ。
「おはようございます、部長」
挨拶すると、部長はふんわりと微笑む。
「おはよう、桃原さん。ごめんね、圭介が邪魔して」
ほら、戻って。
そう言いながら、部長は䋝田先輩の背中を軽く叩いて促した。
「じゃ、俺も戻るかな」
練習の輪に入っていく部長たちを見ながら、二ノ宮が私に背を向ける。
そこで、肝心なことを伝えてないと気づき、私は口を開いた。
「二ノ宮」
「ん?」
振り返った彼に私は微笑んで。
「助けてくれてありがと」
感謝を伝えると、二ノ宮も口元を緩める。