キミとひみつの恋をして
そうですね、と困り顔で頷いた私に、先輩は言った。
『でも、何かを変えるのは簡単じゃないからな』
珍しく真面目な顔で。
けれど、次の瞬間には、『あー、花火のお礼は俺とデートしてくれればいいぜ』なんておどけていたけど……
確かに、先輩の言うとおりだ。
何かを変えることは、想像するよりも難しい。
昼間のことを思い返しながら、私はちらりと花火を鑑賞している二ノ宮を見る。
夜空に大輪の花が開いて、咲いて、散って。
色とりどりの光に照らされた二ノ宮の横顔は綺麗で。
思わず息を呑むと、視線に気づいたのか二ノ宮がこちらを向いた。
「どうした?」
「うん……かっこいいなって、思って」
ちょっと恥ずかしいけど正直に伝えると、二ノ宮の頬が赤みを帯びる。
「え……あ、そう?」
珍しく照れたのか、彼は逃げるように私から視線を外した。
そういえば、彼が私を褒めたりすることは多いけど、私が褒めたり好意をはっきりと口にするのは少ないかもしれない。
普段、どうしてそんな恥かしくなるようなこと言うのかな。
虐めて楽しんでるのかな、とか困ってたけど……
なるほど。
これなら確かに、口にして反応を見たいと思ってしまうかも。