あの空を越えて逢いにいく。
静かな場所に行きたくて
俺は杏南を連れていつもの神社にくる。



あの雨の日に、
俺と杏南が初めて言葉を交わしたのも
ここだったっけ。




「この神社‥‥」



そう言って俺を見る杏南に
小さく笑ってみせる。



「俺の安全地帯。そこ座ろうぜ」




俺と杏南は古く小さな神社の端に
並んで座る。



高々とそびえ立つ神社の木々と蝉の声以外
誰もいなくて心が静かになれる。






「卒業後はこういう誰もいねーとこに住みたい」

「え、逢坂くんどこか行っちゃうんですか?」

「は?いやお前も一緒だし」




俺は指先で、
隣に座る杏南の頭を軽く小突く。




「ずっと一緒って俺が言ったの忘れた?」

「!」



杏南はまた頬を赤くさせて
顔をブンブン左右に振る。


 

< 122 / 123 >

この作品をシェア

pagetop