あの空を越えて逢いにいく。
「ちゃんと本気だからいい加減信じて」



俺がなるべく優しく言うと
杏南は照れながら嬉しそうに微笑む。




じんわり暑い夏の正午。 


早足でここまで歩いてきたから、
俺も杏南も額から汗が流れてる。



木々の葉の間から降り注ぐ木漏れ日が
二人の足元を優しく彩る。





「こういうの‥‥幸せっていうんですね」



杏南はしみじみと噛み締めるように
ぽつりと言う。




んー‥‥確かに。

なんかすげぇ穏やかで良い雰囲気だ。



いままで自分の生活や未来には
夢も希望も持ってなかったけど


これからの俺の隣には杏南がいて

二人ならなんでもやれそうな気がする。






「私、今日なんにも出来なくて自分が不甲斐なかったんですけど、逢坂くんとこうなれて、マイナス100だったのがプラス100くらいになった感じです」


「は?なにその例え」


「私の自己肯定レベルです」


「ぷ」




真面目に変なこと言う杏南に
思わず吹き出す。




そして俺は
今日の体育館での杏南の様子を思い出す。


人並みにコミュニケーションを
取れるようになりたい、とか


周りの人から逃げてた自分を変えたい、とか
そんなことを言ってたっけ。





「つかお前の肯定レベル、基準おかしくね?」


「そうですか?」





図書館でクラスメイトに罵られて
言い返せないコイツを見て


そのたびに苦しくなるなら
変えてやりたいって思ったけど。



実は一緒にいておもしろい奴だったし
慣れれば普通に会話もできるし。



眼鏡や髪に隠れるのはやめて
雰囲気もすげー良くなった。




「あとお前に必要なのは自分に対する自信だけだろ?」



クラスに溶け込めないとしても
うまく話せなくても

それって悪いことなのか?

それって杏南らしさじゃねーのかな。



会話能力とか協調性なら俺も無いし(笑)





「なんも変わんなくても良いからもっと自分好きになってよ」




俺が好きになった杏南。

俺の救世主の杏南。


お前はそのままですげーかっこいいよ。


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