あの空を越えて逢いにいく。
翌朝




私は逢坂くんと会うために
部屋で身支度をしていた。


休みの日に誰かと会えることが嬉しくて

それが逢坂くんであることが嬉しくて‥‥




鏡を見る顔がにやけてしまう。

私どうしちゃったのかな?








ーーーコンコン、ガチャ



その時、ノックと共に父が入ってきた。

私の体に緊張が走る。







「昨晩はずいぶん遅かったんだな」




ずしっと低い声。

父は私のベッドに腰をかける。


私は身支度の手を止め、
ベッドの前の床に正座する。





「す‥すみませんでした」

「友達が出来たのか?」

「‥はい」

「どんな友達だ?」

「・・・・・」







厳格な父に
昔から洗脳のように言われている。



ムダな友達は作るな。
利益を産むことが大切だ。

男友達も作るな。
間違いがあっては私の将来に傷が付く、と。






「まさか男か?」

「‥‥違います」




私は初めて、父にウソをついた。


本当のことを言ったら
もう会わせてはくれないと思ったから。





「私に説明のできない友達付き合いはするな」

「はい」

「学生の内は勉強に励みなさい」

「はい」

「今日も出掛けるのか?」

「はい」





父はため息をつきながら腰をあげる。





「まぁ良い。今日は早く帰りなさい」

「‥‥はい」








ガチャ‥‥パタン


父が部屋から出て行くと
私はゆっくり息を吐き出した。





さぁ、早く逢坂くんのところに行かないと‥‥



立ち上がり、ふと鏡を見ると

そこには無表情で
死んだ魚のような目をした私が映っていた。




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