あの空を越えて逢いにいく。
「じゃあ杏南さんはこっちに来てね」








訳が分からないままオーナーさんに連れられ、私は鏡の前のイスに座らされる。






え、え、え~?!





助けを求めるように
逢坂くんの方を見ると


逢坂くんは慣れた様子で雑誌を一冊とり、黒い革張りのソファに腰をかけくつろいでいた。






「長さはあまり切らない方が良いかな?」


「へ?!いや、あの‥‥」


「高校生だからカラーリングは出来ないよね。毛量がかなり多いから、ハサミで軽くして、さらにボリュームも抑えたいから軽くストレートもかけても大丈夫?」


「え、あ、えっと??」


「じゃあまずシャンプー台に移ろうか」







どうしよう。

オーナーさんの言っている事が
全然わからない。


普段、髪は自分で切っているから
ヘアサロンに来たのはこれが初めてで‥‥。


とにかく私のこの剛毛を
減らしたいっていうのだけは伝わってきた。


確かにすごいゴワゴワだしな‥‥





白いマントをかけられ
照る照る坊主のようになった私。



シャンプー台に案内される途中
私は半泣きで逢坂くんを呼ぶ。


「お‥逢坂くん‥‥」



逢坂くんは雑誌を見ていた顔をあげると
小さく微笑んだ。










‥‥ええい、もう、どうにでもなれ!






「よ、よろしくお願いします!」



私はオーナーさんに身を任せることにした。



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