あの空を越えて逢いにいく。
ーーーカシャ カシャ
ヘアサロンのスペースの一角で
照明を当てられながら
オーナーさんが一眼レフで私を撮る。
「杏南さんすごく可愛いんですけど、顔の力抜いて表情もっと自然にしましょう」
「す、すみません」
主に胸から上の撮影らしく、
ポーズを取ったり難しい事は要求されない。
なのに“顔から力を抜く”という
たったそれだけの事が、なかなか出来ない。
「杏南さんすごく良いよ。一旦休憩しよう」
「は、はい‥‥」
何枚か撮ったあと
オーナーさんは一眼レフを一旦置くと
逢坂くんのところに行った。
私はイスに座ったまま
自分のダメさ加減にため息をつく。
すごく良いよ、
なんて言ってくれたけど
オーナーさんの優しい嘘だと分かってる。
自分でも顔がピクピク引きつってるのが
分かるもん‥‥。
「すげ‥‥予想以上に変身してる」
そこへ
逢坂くんが来てくれた。
「そ、そうですか?だったらすべてオーナーさんのお陰ですね///」
メイクと着替えをしたあと
オーナーさんにはすごく褒めてもらったけれど
メガネを外した状態の私は
鏡にうつる自分がぼやけてしまい
いまいち自分の変身ぶりが分からなかった。
でも、逢坂くんも褒めてくれるぐらい
すごく良くしてもらったんだな。
「お前そのまま、コンタクトとかにしたら?」
「え?」
「正直、メガネはずした方がお前可愛いよ」