あの空を越えて逢いにいく。
それから黒猫は家の中をキョロキョロ見渡す。




「今夜は杏南ひとりなの?」

「あ、はい、今夜というかだいたい一人でいることが多くて」




黒猫はうんうんと頷く。




「お父さんとは上手くいってる?」

「え?父ですか?まぁ‥‥普通ですかね」

「そうなんだ」

「向こうは操り人形くらいにしか思ってないと思うけど‥‥」



黒猫は澄んだ目を大きくさせる。



「そんな事を言わないで?きっと不器用なだけだと思うよ」




まるで自分のことみたいに
悲しそうな声をだす黒猫さん。


こんな私に‥‥親身になってくれてるの?





「ありがとう、でも黒猫くんは私の父を知らないから」



私は黒猫に会ってから
初めて小さく笑う。


 

そういえば逢坂くん以外で
こんなにたくさん自然に会話をしたのは
この黒猫が初めて。

 
なんだか不思議な猫だな。



話したのは今日が初めてのはずなのに
すごく話しやすい。


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