「強がってんだよ…気づけバカっ。」


「っ、、後悔なんて、、させない。」



フェンス越しに聞こえたその声は
どこか苦しそうで


「俺っ、、もう、嫌なんだっ‥
目の前で失うのは‥」


そう言う楠木くんの瞳は
今にも濡れてしまいそうで

怖くなる‥


楠木くんの口振りからは
今までに大切なものを失ってしまった

後悔を感じてしまう‥


そんな楠木くんの前で、目の前で、、

今、この時、ここから飛んだりしたら‥



私が楠木くんにとって
大切な存在じゃないことくらい分かってる

だけど、それでも、、



楠木くんには助けられなかったんて
そんな罪悪感を持って欲しくない

きっと、目の前で人が死ぬなんて
迷惑でしかないから、、


消えるなんて、、そんな私のわがままで
楠木くんを苦しめたくない‥


消えるなら、、最後くらいは、、


誰にも迷惑をかけたくない。



無意識にフェンスを越えて
内側に戻った

そんな私を見て
安心した表情を見せる楠木くん

だけど、その瞳は、、まだ揺れていて、、


「楠木くん、、、ごめん、、ね。」


ごめんね、、本当に‥。

そんな辛そうな表情をさせてるのは私だから

また、大切な人を苦しめた。
そんな後悔だけが、押し寄せてくる、、


「っ、、よかったっ、、、、。」


楠木くんの口から漏れる安堵の声
その声が熱を持つくらいに近い



「くっ、、楠木くん?」



壊れものを扱うみたいに優しく
私を包み込む楠木くんの温かい体


また、胸が締め付けられて、、




鼓動が早まった‥
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