「強がってんだよ…気づけバカっ。」


「おかえりっ」


部屋に戻るとそこにはいつも通りの
優しい楠木くんがいる

それだけで、なんかホッとする。


「ただいま‥」


こんな言葉を交わしたのはいつぶりだろう
久々に口にしたフレーズは何かぎごちない。


「ちゃんと温まってきた?」

「うん。」

「そっかぁ〜よかった。」


安心したみたいな表情の楠木くん。
本当に、こんな世界にも、
こんなに優しい人がいる。

夢のようなこの時間に

ありがとうって無性に言いたくなる。



「ありがとっ、楠木くん。」



ありがとう。


「んっ?急にあらたまってどうした?」


「なんか、言いたかったの〜」


「ふ〜ん。変なの〜(笑)」



お風呂へ向かう楠木くんの後ろ姿は
男らしくて、見惚れてしまう。

きっと、楠木くんの彼女になる人は
幸せなんだろうなっ。
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