渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
「なんて、幸せな事でしょう……」
「まぁ!カルデア様っ、せっかくのお化粧が取れてしまいます!」
泣いているカルデアの顔に布を当てて、マオラは化粧が取れないよう涙を優しく拭う。
「泣くのはまだ早いですよ、カルデア様」
「マオラ……ふふっ、そうね」
「その調子です、笑ってください!」
はにかむカルデアに、マオラはパッと笑顔を浮かべた。
化粧を直していくマオラに身を任せながら、カルデアはこれから愛を誓う未来の夫の姿を思い浮かべて顔を綻ばせる。
(ガイアスの婚礼衣装、きっと素敵なんでしょうね……)
このように心踊る結婚式は初めてだった。
イナダール国の結婚式は、独立国家であったため閉鎖的で、形式だけの短い誓いをするとすぐに終わった。
このように、念入りに準備をする事なんて無かったのだ。
「カルデア様、失礼だとは思うのですが、私はカルデア様を姉のように慕っております」
「マオラ……」
「だから、こうして大好きな人と結ばれて、幸せそうに笑うカルデア様を見ていると、嬉しいのです!」
その目には涙が浮かんでおり、カルデアは静かにマオラを抱き寄せた。
(この小さい存在に、どれだけ心救われた事でしょう)