渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
「私には、弟がいます」
「まぁ!そうなのですか、初めて知りました」
「ふふっ、それも、よく出来た弟なのですが、姉離れはまだまだ先でした。ですが、イナダール国に嫁ぐ事になり、国に置いてきてしまった事をずっと後悔していたのです」
「カルデア様……家族と離れ離れになるのは、心細いですよね」
マオラの言葉に、カルデアは頷いた。
(アイルの事を思うと、胸が締め付けられそうになる)
カルデアは胸に手を当てて、襲って来る後悔の念を抑え込むように深呼吸をした。
「でも、あなたが現れてくれた……」
「私……ですか?」
マオラは驚いたようにカルデアを見る。
そんなマオラの手を両手で握り、カルデアは愛しい妹に向けるような温かい眼差しを向けた。
「はい、ですから、妹のようなあなたと過ごす事で、私は心救われていたのです。私も……あなたを妹のように愛しています」
カルデアが泣きながらマオラに笑顔を向けると、マオラはくしゃりと顔を歪めながら、ガバッとカルデアに抱きつく。
「幸せにっ、なってください!」
「はい……」
「絶対、絶対、世界一で幸せなお嫁さんになってください!」
「約束します、マオラ……」
マオラと抱擁を交わしながら、カルデアは思った。
これから、何年、何十年という月日が経とうとも、今日という日を、一生忘れる事は出来ないのだろうと。