渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~



カランカランと城中に響き渡る鐘の音。
厳かな空気に包まれる聖堂で、赤い上質な絨毯の上を一歩一歩進む。

手にはビスカのブーケがあり、ビスカはこの国でいう幸せの象徴なのだと、マオラから教えられた。

この国には、優しい民と、幸せを願うような素敵な伝統と、生活を潤わせる自然に溢れてる。

その一つ一つを知る度、カルデアはこの国を愛しいと思った。



「おめでとうございます、カルデア様、ガイアス様!」

「なんとお美しい……」

「未来の王妃様の誕生ですね」


祝福の声の中、カルデアはたた真っ直ぐに、手を差し伸べてる微笑んでいる愛しい人の元へと歩いていく。

母国より遥か南の大陸にある、英雄王の治める海に囲まれたナディア国。


(私は今日、この瞬間からナディア国の王妃になる)


「本当に……女神とはお前の事だな、カルデア」


差し出された手をカルデアは取った。
重なる手を、ガイアスは強く握り、軽く引く。


(あぁ、いつもこの手が私を導いてくれる……)



「そういうガイアスの方が、とっても素敵すぎて、直視ができないわ」


ガイアスの婚礼衣装は、カルデアの純白とは違い、萌えるような朱色の生地に黄金の鳥の装飾が施された物だった。

その腰には剣を差しており、この国では『愛する者を守り抜く誓い』という意味が込められているらしい。

ともかく、英雄王に相応しい、ガイアスの力強さが際立つ衣装だと、カルデアは見とれる。


「これから、ずっと連れ添うというのに、見つめ合えないなんて、ごめんだ」


軽い冗談を交わしながら、ガイアスはカルデアを祭壇の前へと立たせた。


「汝、カルデア・アルナデールを妻とし、死が二人を分かつまで、共に生きると誓いますか?」


司祭に投げかけられた誓いの言葉に、ガイアスはいつもの不敵な笑みを浮かべる。


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