渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
「お前は……可愛らしい、そして美しい」
「ガイアス……っ」
「そうだ、もっと俺の名を呼べ……っ」
ガイアスは今すぐにでも全てを奪ってしまいたい衝動に駆られて、息を詰まらせる。
それでも抑えようと思ったのは、カルデアを大事にしたい気持ちからだった。
「カルデア、俺の王妃……っ」
「愛してる、ガイアス……っ」
求められる内に、カルデアはまるで夢の中にいるかのようにボーッとする。
なのに、時々ガイアスが与える衝撃が、今共に刻むこの時間が、紛れもない現実だと教えてくれる。
そのたびにカルデアはホッとした。
ついに、カルデアの意識が遠のきそうになった時「お前は、初めてだったのだな……」と、ガイアスの嬉しそうな声が耳に届く。
(結婚も夫という立場も、私にとっては二度目。でも、あなたにあげられる初めてがあった……それが、たまらなく嬉しい)
そう伝えたかったのに、カルデアは重くなる瞼に耐えきれず、愛しい人の腕の中で微睡むように眠りについた。
***
「んんっ……カルデア……?」
眩しい朝日に導かれるようにして、目を覚ましたガイアスは、ぼんやりとする頭で、真っ先に愛しい王妃の姿を探した。
「ん……」
まるで返事をするかのように声をもらし、隣で規則正しい寝息を立てるカルデアを見て、ホッと息を零す。
「おはよう、カルデア」
カルデアは、目を離すと消えてしまいそうに儚い。
だからこそ、ガイアスは焦っていたのかもしれない。
どこへも消えぬよう、心も体も手に入れて、自分を帰る場所にして欲しいと。
(そして、その悲願は昨日、達成されたのだが……)