渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
六章 攫われた王妃と奴隷船
「カルデア、お前は何をしているんだ」
中庭の噴水の淵に腰掛けて、バケツいっぱいのオレンジの実の皮をナイフで剥いているカルデアの前に、ガイアスは怖い顔で仁王立ちしていた。
「えっと……オレンジの実の皮を向いてるの」
「俺が聞きたいのは、そういう事じゃない」
カルデアはドレスが汚れるのも気にせず、使用人同様の仕事をしており、ガイアスは卒倒しそうになる。
「何故、使用人の仕事をお前がしているのか、と聞いているんだが?」
結婚してから一ヶ月が経った。
最初は抜けなかった敬語も取れてきて、今ではガイアスだけでなく、使用人にも砕けた口調で話せるようになっている。
王妃としての威厳のためにも、ガイアスがそうしてくれと頼んだからだった。
「えっと……人手が足りなそうだったんだもの。あ、でもみんなを怒らないであげてね?」
「怒りはしないが……お前が怪我をしないかが、心配なのだ」
身の上がそうさせるのか、今日だけでなく今までにも何度か、カルデアが使用人の手伝いをしている場面にガイアスは遭遇している。
最初に感じていた可憐さとはかけ離れているカルデアに、お転婆な所があった事をガイアスは最近気づいた。