渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
「それでも、今は心から幸せそうだ。私は、カルデア姉様の笑顔を見られて、本当に嬉しいです」
「アイル……私も、あなたが約束を胸にここまで大きくなっていた事、本当に嬉しく思うわ」
この国を経ち、約一年経った。
その短い間に、アイルも国もカルデア自身も大きく前進したのだと実感する。
「あのね、アイル。夫を紹介するわ」
「……お初にお目にかかる、夫のガイアス・ナディアだ」
振り返ったカルデアにすぐに気づいたガイアスが、側にやって来て名乗った。
「お初にお目にかかります、ガイアス様。私は弟のアイル・アルナデールと申します」
「おお、弟もカルデアに負けず劣らずの美人だな」
「え?」
「俺の事は、義兄(にい)さんとでも呼んでくれ」
軽い調子でアイルの肩をポンポンと叩くガイアスに、アイルは戸惑いの視線をカルデアへ向ける。
カルデアはそんな二人を見つめて、苦笑いした。
「こういう人なの」
「はぁ……」
「きっとあなたにとって、頼もしい義兄様になると思うわ」
(強引で俺様で、時々突拍子も無い事を言い出すけれど、そんなガイアスが私は好き。だから、アイルにも好きになってもらいたい……)
カルデアの笑みにアイルもホッとしたのか、なんだか恥ずかしそうに「義兄様」と名前を呼んだ。
「お、おう!これからは、鷹狩りも酒も飲み交わそう、それから……」
「義兄様……はい!どれも、ご一緒したいです!」
ガイアスはアイルに「義兄様」と呼ばれるのをくすぐったそうにしていたけれど、弟が出来た事が嬉しいのか、終始笑顔だった。