渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
「カルデア姉様、私は誓います。必ずやこの国の王となり、カルデア姉様のように、身も心も民の平穏のために、捧げ尽くすと」
「期待しています」
カルデアがあえて、王女として接したのは、アイルの王位継承者としての決意を揺らがせたくなかったからだ。
清々しい笑顔で、カルデアはアイルから手を離し、手網をしっかりと握り締めた。
「カルデア姉様、どうかお幸せに」
アイルは、心にも無いことを言った。
それでも、カルデアの幸せを願わずにはいられないのだ。
この世界で、たった一人の肉親なのだから。
「ええ、行って参ります。アイルも、どうか息災で」
(さよなら、愛しいたった一人の弟。愛しい母国、アルナデール……)
馬の腹を蹴り、馬の嘶きと共にカルデアは駆け出した。
一度も振り返ることなく、運命に立ち向かうかのように、イナダール国へと。