渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
三章 王女様の看病
ガイアスと丘に出掛けてから二日が経った。
マオラに髪を梳かれていると、突然部屋の扉が開いて、カルデアとマオラは驚きながら振り返る。
「カルデア、鷹狩に行くぞ!」
「え……ガイアス様?」
(何故、急に鷹狩……?)
ガイアスのグローブをつけた片腕には、白い体に黒の斑点模様のある鷹が、鋭い視線で辺りを見渡しながら乗っている。
翼を広げるとガイアスの上半身を覆い隠せる程の大きさがある鷹に、カルデアは圧倒されながらも、ガイアスを見上げた。
「馬を三十分走らせて、山のふもとまで行く。カルデアも、早く支度をしろ」
ガイアスは大股で、化粧台の前に座るカルデアの側にやって来ると、そう言った。
一部始終を見ていたマオラは、顔を真っ赤にして、髪を逆立てるような勢いで二人の間に立つ。
最後に腰に手を当てると、ガイアスを真っ向から睨みつけた。
「ガイアス様!」
「な、なんだ……?」
マオラの怒鳴り声に、ガイアスはビクリと肩を震わす。
「カルデア様はお支度中なのですよ、ノックも無しに部屋に押し入るなんて、何事ですか!」
「す、すまないマオラ……だが、俺はカルデアを楽しませたくて……」
「あまりに常識無しだと、未来の王妃様に逃げられてしまいますよ!その時はカルデア様と一緒に、私もお暇を頂きますからね!」
マオラの気迫に圧されて、ガイアスは口を噤む。
肩を落として、あからさまに落ち込んでいるのが、カルデアにも見てわかった。
(マオラには、きっと誰も逆らえないわね)
英雄王も顔負けのマオラの強さに、カルデアは苦笑いする。
こうやって意見を言い合えるほど、マオラやシュドとの絆は硬いのだと、カルデアは思った。