愛してるじゃなくて好きだと言って
愛してる?
「ねぇ、愛してるよ」
また彼女の悪い癖が始まった。
向かい合って座る小野田桜(おのださくら)は頬杖をついて俺の返事を待っている。
「そりゃどうも」
愛してる攻撃にもう慣れっこの俺は、目尻を赤くさせてヘラヘラ笑うサクの手から缶チューハイを奪った。
「…路安(ろあん)はうちのこと愛してる?」
何もなくなった手元をじっと見つめたあとに、この質問はやめて欲しい。
そんなのまるで俺がサクの事をいじめているみたいじゃないか。
しかしながら、このやり取りも数え切れないほどしている。
ここで否定するとだる絡みが長引くのは経験済みなので、所詮、酔っぱらいの戯言だと流して頷く。