私は対象外のはずですが?~エリート同僚の甘い接近戦~
視線を感じて顔を上げると、真由がじっとこちらを見ている。私が急に黙り込んだから、心配してくれてるのかな。

私は笑みを浮かべながら本音をもらした。

「別に落ち込んでないから。いつものことだし」

「それは分かってる」

……そっか。

「私が気にしてるのは、詩織が“いつものこと”って思うことに慣れてしまってるじゃないか、ってこと」

「え……?」

「詩織って、その大人っぽい雰囲気で周りは気付いてないけど、私から見たら、“残念な女”なのよね」

……ズバッと言いますねー……。

でも、真由の言葉に悪気は無いのは長い付き合いで分かってる。

色白で、手足も細くて、長いストレートの黒髪の真由は、一見、儚げな雰囲気を持っているけど、中身はめちゃめちゃしっかりしてる姉御肌だ。言いたいこともはっきり言うけど、それでも同期で一番仲がいいのは、真由の、情に厚くて裏表の無い性格が好きだからだ。

私と真由は同じ営業部だけど、所属している課が違う。真由は一課で、私は二課。なので、お昼の時間がたまに合う日は、何だか嬉しい。

「詩織……このままだと、気付けば後輩の寿退社を次から次に見送って、独身のお局になって、周囲から煙たがられて、老後も一人寂しく過ごすことになりそうで」

「……老後まで心配して頂いて、ありがとうございます……」


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