スクールシンデレラ
「加藤くん、採寸ちゃんと出来たかなあ?」

「あぁ、大丈夫だよ~。加藤くん、ああ見えて小中学校で手芸部だったんだぁ」

「そうなんだ。私は家庭科クラブで、しょっちゅうミシンやったり、手縫いやったりしてたから慣れっこだよ」

「へぇ~すごいねぇ」


仕事も大分なれ、係のみんなとは世間話を出来るくらいにまでなった。

特に、このおっとり口調の中川つばめちゃんは話しやすくて、いつも優しく手伝ってくれて、一番の仲良し。

まさか友達が出来るなんて思ってもみなかった。
どうせ1人で何人もの衣装を作り、徹夜で脚本の誤字脱字を訂正し、ヘロヘロになりながらお茶を運ばなければならないと思っていた。

今までの地獄のような生活が嘘のように、今はとても平和。
いじめの主犯格達は大舞台へ向けて邁進しているから私を構っている暇は無いみたい。


雑用係で良かった…



「あのさぁ…」

「何?」


つばめちゃんが真剣な目でこちらを見る。


「私、地味子が報われても良いと思ってる。ーーー特に、乙葉ちゃんみたいな子は報われて当然だよ」

「つばめちゃん…」

「今まで散々いじめてきたのに、私達をリードしてくれて、仕事も完璧にこなして…」

「雑用係のみんなはいじめてないよ」

「ううん。直接的にいじめてなくても、それを見て見ぬふりしてたら、いじめてることと同じだよ。遠野さん達と私達は同罪」

「私、今幸せだよ。つばめちゃんが毎日話してくれるお陰で今までの苦しみが日に日に消えていってるんだ…。嘘じゃない。本当なんだよ」


私が話している間、つばめちゃんは目にいっぱい涙を貯めてこらえていたけど、耐えきれずに泣き出した。


うわーーーーーーーん

うわーーーーーーーん

うわーーーーーーーん



これがいじめの傍観者の罪の重さなんだ。



私はゆっくりとつばめちゃんに近づき、優しく抱きしめた。

つばめちゃんが私の言葉を聴いてくれている時と同じように…


「私、乙葉ちゃんならシンデレラにだってなれると思う。その分厚い眼鏡の奥に煌めく瞳があるから」


さすが、文学少女。
言うことが一味違うね。



じゃあ、少しだけ、
ほんの少しだけ、信じてみるよ。

私のシンデレラストーリーを。

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