スクールシンデレラ
宮殿に着くともうすでに舞踏会は盛り上がっていました。

少女は周りの女性たちに気圧されながらも宮殿の一番大きな部屋へと向かって行きました。


「皆さん、今日は舞踏会に参加してくれてありがとう。今夜が皆さんにとって思い出に残る素敵な夜になりますように…。
それでは、我が息子を呼ぼう」


少女が大勢の人だかりをぬってようやく前の方に行くと、ちょうど階段から王子様が降りてきました。

少女は王子様の余りの格好良さに心臓が止まりそうになりました。

中央に歩み出た王子様はこう言いました。

「今日はご参加頂き誠にありがとうございます。今日は新国王になる私の花嫁候補、つまりプリンセスを見つけるための舞踏会でもあります。舞踏会が最高のものになりますように…。では、皆さん、踊りましょう」


女性たちは王子様の周りに一斉に駆け寄って行きました。

少女も負けずに駆け寄ろうとしましたが、その必要は全くありませんでした。





なぜなら…ーーー


「一緒に踊って頂けませんか?」


王子様が自ら少女を誘ったからです。

少女は自分で良いのかと一瞬躊躇しましたが、王子様の手に引かれ、踊り出しました。

少女はステップやターンなど習ったことが無かったのですが、王子様の優しいリードにより自然と楽しく踊っていました。

王子様の手が腰に回り、距離が近づく度に少女はドキドキしました。
初めての体験に胸が弾み、ずっとこのままでいたいと思っていました。


少女と王子様はしばらく踊ったあと、大きなベランダに出ました。

夜空には月と数え切れないほどの星が瞬いています。

「こんなに楽しく踊ったのは初めてだよ」

「私もよ。あなたと踊れて本当に良かった」

「これは運命だ。僕は君とこの国で一緒に生きていきたい」


愛の告白を受け、少女はびっくり。

しかし、少女も王子様との出会いは忘れられず、運命だと思いました。



少女が返事をしようと口を開けたその時。



ゴーーーーン

ゴーーーーン

ゴーーーーン



「私、もう行かなくちゃ」

「待って!!」

王子様が追いかけてきますが、振りかえることはできません。

少女は一刻も早く帰らなければならないのです。

魔法が解けてしまう前に…ーーー


階段を急いで駆け降りようとすると、ガラスの靴の片方が脱げてしまいました。

少女は拾うことができずにかぼちゃの馬車に乗り込みました。

遠ざかって行く宮殿に未練と王子様を残し、夜の森へ消えて行きました。
< 22 / 25 >

この作品をシェア

pagetop