ワケありルームシェア 2
彗に聞かれた時はわからなかった。だけど、今なら言える。






_______________月はずっと前から綺麗だったよ。






ちゃんと哀川さんの方を見て。伝わるかな。
「い、意味を、理解して、言った……の……?」
恥ずかしそうに、小声でいう哀川さん。その行動も可愛く思える。
「…ん。」
すると、哀川さんの顔がさっきよりも赤く染まる。顔を覆って、またうずくまる。
「大丈夫…?」
流石に焦る。急にうずくまったら誰だって驚くだろう。しゃがみこんで顔を覗くと、
「う、嬉しくて…っ。あっ。い、今顔真っ赤だから、……見ちゃダメ、です…。」
理由も可愛い。だけど、恥ずかしいのは哀川さんだけじゃない。僕も顔が熱い。
「僕もきっと顔赤いんだから、哀川さんの顔も見せてよ。」
自分だけ隠してずるいよ、と言うと哀川さんはゆっくり顔を上げた。その瞬間をみはからって抱きつく。
「これだったらお互い顔見えないでしょ。」
こんな公共の場で何をやってるんだろう。普段の僕ならこんなことしないと思うんだけど、今だけは特別だ。
「うん。」

その日は、特別な日になった。
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