ワケありルームシェア 2
「えっと………。」
哀川さんがなにか言おうとしたんだけど、口籠もる。
そして、長い沈黙。
久しぶりでなんか恥ずかしい。でもまぁ、戻ってこれてよかった。兄さんは元から兄さんが仕事に戻るまでの間、ホテルに泊まらせて、話をするだけの予定だったんだけど、説明不足で大事になってしまったらしい。そうなら初めからそう言ってくれたら良かったのに。バカ兄。
まぁ、今回は兄さんのおかげで思いを伝えられたんだけどね。

ところで………、
「哀川さん、なんで顔をタオルで隠してるの…?」
「は、はい!…えっと…、嬉しくて恥ずかしいから…、です。」
「なんで敬語…?」
「うぅ、恥ずかしいから。」
「僕も一緒なんだからいいよ。ほら、顔見せて…?」
そう言うと恐る恐るといった感じでタオルで隠れていた顔を見せる哀川さん。
「……っ。」
今度は僕がそっぽを向く。身長的に上目遣いになってるし。反則でしょ。

とりあえず、お互いが落ち着いてから話すことにした。
「合宿、って緋山君来るよね…?」
「…まぁ、一応ね。」
「そっか!良かったぁ。」
本当に嬉しそうに顔を綻ばせる哀川さん。それにつられて僕も微笑む。
「じゃあ、明後日だから急いで準備しなくちゃ。」
「バイトは大丈夫?」
「うん、お盆休みなの。」
「そう。」
「だから、いっぱい緋山君といられるよ。」
「…っそうだね。」
なんで笑顔でそういうこと言うのか。顔の熱が冷めない。こういう事言うのは哀川さんは恥ずかしくないのか。まぁ、無自覚だと思うけどね。


ルームシェア32日目、終了。
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