ワケありルームシェア 2
次の日、目が覚めるともう既に10時を過ぎていた。
「さすがに、寝すぎた……。」
きっと哀川さんはバイトに向かっているだろう。


“昨日は疲れちゃったかな?ゆっくり寝てていいからね。ごはんは机の上にあるから冷たかったら電子レンジで暖めてね。”

メモが机の上に置かれていた。その横にはラップがかけられた朝食。オムレツかな。

「…はぁ、握手し損ねた。」
いや、別にしたい訳では無い、けど…。唯一哀川さんに触れられる時だ。……………………なんか、変態みたいだ。

「おーい、螢!いるかぁ?」
外から聞きなれた声がする。澄じゃない。澄だったら合い鍵で入ってくる。彗はこんなに大きな声が出せない。

「…嘘でしょ、まだお盆までには時間があるはずなのに…………。」

「あれ?出かけてるのか?」
外からまだ声がする。息を潜めてリビングに縮こまる。絶対バレるものか。表札は………、心配ないか。ここには表札はなかった、はずだ。

それから少したったら声がしなくなった。
帰ったか?確認しようか。…………いや、顔をだした瞬間捕まるのもあるかもしれない。

哀川さんが帰ってくるまで待つか。

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