幼馴染の彼~あの日の約束~
 仕事が終わり、真子からの夕食のお誘いは今日は断った。

 引っ越しが近づいているから、それまでに少しでもマンションの片づけをしないと間に合わないと困る。智弥と休みが合えば2人で一緒に片づけてくれるが、せっかくの休みをいつまでもそんなことに費やすのももったいない気がして。

 できる時に少しでもやっておけば早く終わるしね。


 夕食だけどこかで買って家で食べよう。

 そう思って街へ向かって歩いていた。

 いつも人が多くて、一体どこからこんなに人が集まってくるのだろうと毎回思いながら歩いているけど、今日もそんな感じだ。

 そんな時、数メートル先に見かけた後ろ姿を見つけた。

 (あれは智弥だ)

 こんなに人がいても、わかってしまうくらいかっこいいオーラが出てるというか。
 きっと、愛ね!と心の中で笑う。

 少し早歩きで追いついて脅かしてやろう。

 そう思って、智弥に少しずつ近づいていくと、智弥は1人じゃないということに気が付いた。

 歩幅がゆっくりになる。

 智弥の左隣に見え隠れする頭。その人に向かって優しい笑顔でなにか楽しそうに話すと、隣の人も笑って返事をしているようだ。

 その横顔は、私の知らない若い女性だ。
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