幼馴染の彼~あの日の約束~
 私は何も言わずに、ベッドの端に座るが、智弥は閉められたドアの前で立ったまま。

 しばらく沈黙が続き、部屋の空気が重くなって息をするのも苦しくなってなってきたとき、智弥が話し出した。

「今回は、誤解させるようなことしてごめん」

「誤解?」

 智弥は頷く。私は眉間に皺を寄せて、その言葉の意味を考える。

「・・・あの人、街で一緒に歩いてた人よね?」

「街?」

 今度は智弥が質問してきて、私が頷く。

「高級そうなお店で一緒に、ネクタイ選んでたじゃない。すごーく仲良さげに」

 ぷいっと顔をそむけると、智弥は「あぁ!」と何かを思い出したかのように答えた。

「なんだ、見かけたなら、声かけてくれれば良かったのに」

「はぁ!?あんなに仲よさそうなの見てて、声なんてかけられるわけないでしょ!?」

「あいつ、妹だよ。覚えてない?妹の杏子」

「いもうと・・・って妹!?」
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