幼馴染の彼~あの日の約束~
 でも、その気持ちは杞憂だった。

 父の言うとおり、高校に上がってから急に身長も伸び、体つきも大人ぽくなり、女性にもモテ始めた。

 自分では自分のことはよくわからないから、女性がいいバロメーターになった。男らしく、なおかつ優しく接すれば女性は喜ぶ。

 何人かの女性とも付き合って、自分に自信をつけていった。

 怜美に認めてもらえる男にならなければ、なんの意味もないと。

 怜美の情報はいつでも手に入った。引っ越しをしても怜美の母、珠子さんとうちの母が懇意にしていたからだ。

 社会人になって、仕事も順調で、恋愛も落ち着いた。自分に自信もつくようになって、怜美と再開した。

 怜美がもし、約束を覚えていてくれたらすぐにでもプロポーズしようと心に決めていた。

 怜美と再開して恋心はピークに達して、抱きついてしまいたい衝動を抑えるのに必死だった。

 中庭で、約束の話を持ちかけて、あの時

「覚えてくれていたんだね」

 なんて、返事をもらっていたら、すぐにプロポーズして、下手したら抱きついていたかもしれない。

 でも、現実は違っていた。

 約束を覚えていてくれていなかったからだ。
< 86 / 90 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop