となりの弱虫ヒーロー【短編】
なんて、安易に考えたのが悪かったのか。


「おい、黙ってないで謝罪しろよ!」


悠馬だとかっていう奴の彼女が、私の腕を掴んだ。


それでも表情を変えない私に苛立ったのか


「キモチワリィんだよ、人形みたいな顔しやがって!」


と右手で拳を作った。


あ、これは、まずい。


ちらっと君を見た。


澄んだ、見開かれた黒い瞳と目があう。


『こ、な、い、で』


必死に口だけで君に伝えると、フッと視線は逸らされた。


それでいい、そのまま。


「だから、その綺麗なキモチワリィ顔、人間に戻してやるよっ!」


意味不明な言葉とともに、完全に顔狙いの、理不尽の塊みたいな拳が飛んでくる。


衝撃に備えて目を瞑る。



















「みさき!」


私の名前を呼ぶ君の声が、聞こえた気がした。
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