ぴーす

「真ちゃんに頼まれたんよ。真ちゃん家はお得意さんじゃけーねぇ。」
今度のは涙は絶対止まらないだろう。
知らない間に私はみんなのところまで駆け寄っていた。近くにいた真太に、
「なん・・・で？っく・・・こ・・こに・・・・おるん？」
泣いているので話しづらい中、必死に話す。
「ん？えっとなぁ、『だって先生、幸子の父ちゃんに別れゆいにいっとるし、勉強できんけぇわしの父ちゃんここで働いとるけぇ、われの為に貸してもろぉたんじゃ。』って中にいるわれを好きな誰かさんがゆっとたで」
意地悪く笑った真太の顔は悪がきにも見えたけど、凄く優しい顔にも見えた。
「うえーん。みんなありがとう！！」
そう言って私はいそいで中に入る。
バン！大きな音を立てて、ドアを開ける。
そこには、顔を真っ赤にした勇太君がいた。
「な、何泣いとんじゃ？！」
「だ・だって、うち引っ越すんよ？」
「わかっとるわ！そがーなことくらい。・・・スマン。」
「ええよ。今日はありがと。こがぁな凄いことしてくれて」
長い間２人の間には息をする音しか、聞こえなかった。
２人の沈黙を破ったのは、予想もしない人であった。
「おったぁ、さーちゃん！」
　こっちゃんだった。手を振っている。その隣には真太がいる。一応手を振り返す私。
「もう！わざわざさーちゃん家まで行ったのに。こん中おるなんか全然知らんかったんじゃけーね！！」
目に涙をためて、こっちゃんは話す。
「ごめん。最後に寄ろうと・・・。」
力のぬけた私の発言に３人は笑う。休館の産業奨励館は、３人、そして後に続いた私の声で響き渡っていた。