(完)嘘で溢れた恋に涙する
そのままリビングと思われる部屋に案内され、理玖に言われて丸いテーブルを囲んで座った。



理玖は何も喋らず、冷蔵庫から取り出したお茶をコップに注いで私の前に置いた。


正直今すぐそのお茶に手を出したかったけど、そんな空気じゃないことはわかっていた。


とにかく話さなきゃいけない。


今の陸玖の様子を見ても、彼が何を思い、私をどうしようと思っているのか全くわからないけど。


私には話すことしか、謝ることしかできないんだから。



決意して、すっと息を吸い込んだ時だった。





「あら、理玖。帰ってきとったと?びっくりした」




ドアの向こうから声が聞こえた。



声の持ち主はすぐにその顔を見せた。



理玖のおばあちゃんと思われる人だった。



60代くらいと思われるその人はすごく上品で素敵な人だった。




「え?お客さん?見たことない顔ね」



微笑を浮かべながら、本来学校にいるはずの理玖と私を叱ることなく、会釈してくれた。




「ばあちゃん、紹介する」



急に理玖が立ち上がって宣言した。



教室で響いた声とは全然違う穏やかで優しい声だった。





< 105 / 381 >

この作品をシェア

pagetop