(完)嘘で溢れた恋に涙する
「え…」



自然に声が漏れた。



血の気が引くっていうのはまさにこういうことなんだろうな。



体の体温が急激に低下している気がする。




にっこりと微笑む理玖から私は目をそらすことができなかった。




おばあさんは表情を失ったように、立ち尽くしてしばらく私の顔を眺めていた。




そして、何か合図がなったように急につかつかと私の前にやってきて私が一口だけ飲んでいたお茶のコップを掴んだ。




次の瞬間、中のお茶は全て私の顔にかけられた。




ポタポタと顔を伝って床に垂れ落ちる雫を眺める。




麦茶の匂いを感じながら、カバンの中からタオルを取り出して濡れてしまった床を拭いた。




そのまま、両手をついて頭を下げた。





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