(完)嘘で溢れた恋に涙する
そして、お腹に力を込めて声を絞り出した。



「私の父が本当に申し訳…」



言いかけた時、髪が強い力で引っ張られるのを感じた。



前髪をぐしゃっと掴まれ、無理やり上を向かせられた。




さっきまでの微笑を思い出せないほどの、怒りに満ちた顔を私はぼんやりと見つめていた。




「あんたと話すことなんて何もない。
今すぐ出てって。
金輪際、理玖に近寄らないで」




その言葉をしっかり受け止めて、私は立ち上がってからもう一度深く頭を下げた。



「本当にすみませんでした」




外から雨が地面に打ち付ける音が聞こえる。




バッグを取って、すぐに家を出た。




異様に冷静に行動をする自分が奇妙に思えた。




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