(完)嘘で溢れた恋に涙する
思ったより強い雨がさっきかけられたお茶の上から降りかかる。



そういえばお母さんに折り畳み傘を持たされていた。




今日の朝がずっと前の出来事のように思える。




玄関の戸を閉め、バッグから折り畳み傘を取り出そうとした時、閉めたはずの戸が開く音が聞こえた。




振り向くと、そこには私のタオルを持った理玖がいた。



その冷たい表情を見ると、さっきの言葉が何度も頭の中でリピートされる。




「お母さんと海央を殺した男の娘だよ」




いつからわかってたんだろう。


いや、きっと初めからわかってたんだ。




「傷ついたか?」




理玖の口から出たのはそんな言葉だった。




「俺はお前と初めて向かい合った時からわかってたよ。お前の正体なんか。
何度も想像の中でお前のことを殺してたからな」






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