(完)嘘で溢れた恋に涙する
だめ。


泣いちゃダメだ。



私にはわかる。



あの日から色んな場所に行って、色んな人と出会った。



たくさんの出来事にあって、善意や悪意を何度も向けられた。




そんな私にはどれだけ自分を偽っている人でも、その人の本性をなんとなく掴むことが出来るようになった。




周りに優しくて、いつも笑顔を振りまいている人はそうやって自分の評価を上げることしか考えてなかったし、




いつも泣いて人の同情を買っていた人は、そうやったら楽に過ごせることを知っていた。




この世は偽善で溢れているのだと理解した。




だからわかる。




理玖は必死に、優しく、温和な自分を冷酷で、残忍な姿に偽っている。




違うお面を被ることはできても、本来の理玖自身を変えることはできないから。




だから、あの時、



体育大会の次の日、



理玖を大好きだと笑った私を一瞬で絶望の淵に突き落とすことをしなかったんだ。



その時今言われたセリフを言われていたら、私は理玖の思い通りになっていただろう。



でもそれをしなかった。



できなかったんだ。




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