(完)嘘で溢れた恋に涙する
まとわりつく憎い手を自分から振り払うことができなかったんだ。




理玖はどうしようもなく優しい人だから。




今日の聖奈ちゃんが起こした騒動をきっかけにすることでしか、言えなかったんだ。




それなら、私は悪になろう。




徹底的に憎まれるべき存在となって、理玖がほんの少しの同情心や後悔を私に残さなくていいように。




いいや、悪になるんじゃない。



どうして、忘れていたんだろう。



私は知っていたのに。




私はもともと悪そのものだったこと。


その上、陸玖の優しさにつけ込んで、自分の罪と報いを忘れ去って、幸せになろうとしていた。


幸せにだなんで一生許されるはずなかったのに。


十字架を背負い続けることが私にできる唯一の償いだったのに。





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